2009年05月10日

ミッドナイト・エクスプレス

Midnight Express

1970年。
ゲリラによる爆破事件が続いていたため、厳しい警戒態勢のトルコのイスタンブール空港。
恋人スーザン(アイリーン・ミラクル)を先に行かせたビリー(ブラッド・デイヴィス)は、搭乗直前でハシシを隠し持っていることがばれて逮捕された。
ビリーは、こんなことをしたのは初めてだし、トルコへは単なる旅行で来て、たまたま出会ったタクシー運転手から2kgのハシシを買い友人に渡そうと考えていただけで、麻薬の運び屋でも売人でもないと主張。
言葉の分からないビリーの前に現れたアメリカ領事館のテックス(ボー・プキンス)は、そのタクシー運転手の逮捕に協力すれば国に帰してやると、話をつけてくれた。
しかし、警官たちと運転手を探すために町に出たのを良いことに、ビリーは隙をついて逃亡。 そしてあえなく再逮捕、投獄された。
父(マイク・ケリン)が国務省に関わりのある領事館職員のダニエルス(マイケル・エンサイン)と、ビリーが先輩囚人から名前を聞いた地元の弁護士イエシル(フランコ・ディオジェーネ)を連れて来てくれたが、裁判では有罪となった。
当時、トルコはヘロイン輸出国と見られてたため、悪いイメージを払拭するために検事(ケヴォルク・マリキャン)は厳しく終身刑を求めたが、ビリーに同情的な判事(ジジ・バーリスタ)が出した4年2ヶ月の判決は、かなり好意的と捉えるべきものだった。
模範囚なら更に1年減刑されると、劣悪な刑務所生活を耐え忍ぶビリー。
英語で会話できる囚人仲間ジミー(ランディ・クエイド)やエリック(ノーバート・ワイザー)やマックス(ジョン・ハート)は、ビリーにとって大いに心の支えとなった。
しかし、少しでも反抗的なら容赦無く体罰を加える看守長ハミドゥ(ポール・スミス)や、なんでも物資を売ってくれるが密告屋でもある囚人のリフキ(パオロ・ボナッチェル)のような、脅威も多かった。
ジミーの脱獄事件、エリックの出所等があった後、ビリーの刑務所での三年半が過ぎようとしていたときに不幸な知らせが舞い込んだ。
ビリーに対する判決を不服とした検事が、“不法所持”よりも罪の重い“密輸”で無期懲役を申し立てたのだ。

実話を基にしていて、ビリーの本をオリヴァー・ストーンが脚色した作品だ。
2度目の裁判でビリー自身が陳述を行った中でも言っていたが、時と場合、世界情勢の変動や政治的戦略のために、ある行為に対する評価が変えられてしまうのは良くあることだとしても、一度結審した罪の重さ・判決内容が覆されてしまうのは納得がいかない。
新たな証拠が出てきたわけでもなく、誤審だったわけでもなく、見せしめのように刑期が延ばされてしまったのは正義に反すると言いたくなる。
その反面。
一方的にトルコの司法制度や刑務所の事を攻め立てるのも、どうかと思う。
作品全体としては、トルコ批判は強くないと思うが、ビリーとビリーの父親の言動は“トルコよりもアメリカの方が強大で正しい”と言った気持ちが現れていてやや不快。
ビリーの扱われた方を可哀想だ・タイミングが悪かったと思う傍ら、アメリカ人だろうが何だろうがトルコの法を犯したのだから自業自得だと思う部分も強かったのだ。
“たかがハシシを2kg持ち出そうとしただけなのに”と言う考え方からして、可笑しい。 “たかが”と言う部分に傲慢さを感じる。
ビリーの陳述でも、最初の内は判決を覆すことがいかに正義に反するかを訴えていたのに、だんだん感情的になって行った後半では、イスラム文化の国トルコそのものを貶すような内容に。
もちろん、若者が他国の文化や政治を見下しがちなのはアメリカ人に限らないと思うからアメリカ人全員を非難する気は無いが、少なくともビリー父子は“郷に入ったら郷に従え”を学ぶべきだ。

当時のビリーが収監された刑務所が、トルコの中で標準的だったのか、アメリカと比べて特別劣悪だったのか、哀生龍は知らない。
映画で見た範囲では、罪人であれば、トルコ人でも外国人でも大人でも子供でも、同じようにその刑務所に収監されていた。
外国人は言葉が通じないせいで行き違いがあって無用の罰を受けることがあったとしても、あの看守長はむやみやたらに気まぐれで囚人虐めをするほど腐ってはいなかったように見受けられる。
房の扉には鍵がかかっていなかったりして、刑務所内では割と自由に行き来が出来るようだ。
同性愛は重罪ではあっても、刑務所内では当たり前のように盛んだったようで、ビリーはエリックとそんな関係だったのだろう。
病人・怪我人用の別棟もあるし、面会だって許されている。
普通程度の環境だと思うのだが、違うのだろうか?

ところで、ラスト。
ビリーは“ミッドナイト・エクスプレスに乗った”つまり脱獄したのだが、事故と言って良い状況ではあったが、あの人の死については何も問われなかったのだろうか?

同じ犯罪でも、国によって軽犯罪であったり重罪であったり、そもそも犯罪には当たらなかったり、色々だ。
時代によって、時と場合によって、罪の重さが変わることがあるというのも、納得が行かなくても現実だと思わなくてはならないだろう。
とにかくこの出来事の一番のポイントは、政治的思惑で確定したはずの刑が覆されるという正義に反することが裁判で起きたと言うことだろう。


posted by 哀生龍 at 12:24| Comment(4) | TrackBack(1) | | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あの親子、高慢な部分がありましたねー。あれで30年上乗せがなかったらあんまり同情出来なかったかも。捜査協力承諾しておいて逃げ出すしっ><
 自分は「助けに来てやる」っと囁いたあの囚人仲間を後で本当に助けてあげたのかが・・・気になりますっ><
Posted by jan at 2009年05月11日 21:42
私子供の頃、これロードショーで見ました(汗)
なんかすごく衝撃的で
(恋人の前に自慰行為するとことか)
確か親か姉と見たのですけど、ませガキだったのかしらん?
音楽が印象的でしたね~。
この主演の俳優さんが早くに亡くなられたり
脚本がオリバー・ストーンなのも後で知りびっくり。

同じ邦題でトニー・レオンものも見ましたが
いろんな意味でもっと強烈でしたヨ(笑)。(思いっきり余談)
Posted by くりりん at 2009年05月11日 22:36
■janさん
>あれで30年上乗せがなかったらあんまり同情出来なかったかも。
本当に、あの態度と刑期は別物だと分かってはいても、同情できるかどうかというと・・・
ねぇ(苦笑)

>本当に助けてあげたのかが・・・気になりますっ><
気がかりですねぇ~
生きている内に助け出してあげたい。
性格が少しでも良くなっていれば何らかの行動をしてくれると思いますが、あの性格のままだったら自由になった途端そんな約束は忘れるかも・・・ヾ(ーー )ォィ
Posted by 哀生龍 at 2009年05月11日 22:52
■くりりんさん
>私子供の頃、これロードショーで見ました(汗)
まさかそんなシーンがあるとは知らずに子供連れで見に行ったんでしょうね。
くりりんさんやお姉さんも驚いたでしょうが、親の方が焦っていたかも?

>この主演の俳優さんが早くに亡くなられたり
見た後で気になってチェックしたのですが、エイズだったそうですね。
この作品しか見ていないのに、残念だと思ってしまいました。

>同じ邦題でトニー・レオンものも見ましたが
>いろんな意味でもっと強烈でしたヨ(笑)。
やはり脱獄モノですか?
どんな風に強烈なのか、ちょっとだけ興味が・・・(笑)
Posted by 哀生龍 at 2009年05月11日 23:02
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Tracked: 2009-11-23 17:22