公開中なので、控えめに。
1950年代の西テキサス。
ボブ・マプルズ保安官(トム・バウアー)とルー・フォード保安官助手(ケイシー・アフレック)の管轄であるその町は、わりあい治安の良い町だった。
ある日、町外れに住むジョイス・レイクランド(ジェシカ・アルバ)の売春行為に対して苦情が寄せられ、ボブから対処を任されたルーが1人で出向いていった。
てっきり客だと思って笑顔で迎え入れたジョイスだったが、保安官助手だと分かると途端に態度を硬化し、罵りながらルーを叩いて来た。
すると、普段は穏やかで人当たりが良い好青年として知られるルーだったが、ジョイスをベッドにねじ伏せると、引き抜いた自分のベルトで彼女の尻を痣が残るほど強く叩き続けたのだ。
我に返りやりすぎたと感じて謝ったルーに、その暴力的な行為に欲情したジョイスはキスを求め、そしてそのまま2人は関係を持ってしまった。
ルーには幼馴染の教師エイミー・スタントン(ケイト・ハドソン)と言う、気ままな恋人のような相手がいたが、その日からジョイスとの逢瀬を重ねるようになっていく。
そんなジョイスから、ジョイスに夢中になっている金持ちの息子、エルマー・コンウェイ(ジェイ・R・ファーガソン)から金を奪ってやろう、という話を持ちかけられた。
エルマーの父チェスター(ネッド・ビーティ)は地元を牛耳っている建設会社社長であり、ルーにとっても怨みのある相手。
ルーはコンウェイ親子に罠を仕掛け金を奪うだけでなく、なんと、愛していると言いながらジョイスの顔を突然殴りつけ撲殺し、痴情の縺れに見せかけてエルマー殺しまでやってしまった。
完全犯罪のはずだったが、ジョイスは首の骨を折りながらも辛うじて意識不明のまま病院に収容されたうえに、ハワード・ヘンドリックス郡検事(サイモン・ベイカー)がルーに疑いの目を向けてきた。
更には、ルーとチェスターの関係を知るジョー・ロスマン建築業評議会会長(イライアス・コティーズ)が、何かを匂わせる発言をする。
ところが、事態は急展開し、ルーも良く知る町の若者ジョニー・パパス(リーアム・エイケン)が犯人として捕まった。
だが、ジョイスとの出会いで内なる殺人衝動を目覚めさせたルーは、これで平穏な生活に戻るどころか、更に殺人を重ねていくのだった。
あまり書かないように気をつけるが、ネタバレの可能性あり!!
原作本が出版された50年代では、このようなタイプの殺人犯は現代以上に衝撃を与えた事だろう。
怨みがある。 殺さなければ自分が殺される。 殺したいほど憎い。 このような理由ならば、まだ理解しやすい。
しかし、愛しているはずの女性を何故殺すのか。 それも、二重人格のように突然豹変して狂気に囚われるのではなく、淡々と冷静に殺すのだから、サイコパスとしか言いようが無い。
SM行為にしても、恐らくは、当時はそのような恋愛の形は受け入れがたいものだったろうし。
哀生龍は、理解できるとまでは言えないにしても、ルーが女たちの顔を殴り最終的に殺してしまうという行為にそれほど違和感を覚えなかった。
愛情と殺意が同レベルで存在しているのか、愛しているから殺してしまうのか、殺す事で愛を完成させるのか、そんな事はまったく分からないが、愛していなかったら殺さなかったんじゃないかと思ってしまった。
積み木を積み上げたから壊すのか、壊すために積み木を積み上げるのか。
勿論、コンウェイ親子に対しては怨みがあったし、口封じ目的で殺した相手もいたから、殺人鬼の素質も勿論あるのだろう。
だが殺す事を楽しんでいるようには見えない。 快楽殺人でじゃないよね。
殺すことに躊躇いがないという点では、やはり普通の人とは違うんだが。
そしてジョイスとエイミーに対しては、ただただ殺人衝動が抑えられない・愛しているから殺さなければならない・その女性といると自分をコントロールできなくなるから殺さなければならない、と当たり前の事として殺したように見えるんだよね。
殺人鬼に同調するつもりは無いが、でもルー・フォードと言う男には、恐ろしさよりも興味を覚える。
場違いな表現かもしれないが、ロマンチックなバイオレンス作品だと感じた。
ジョーとルー。 ボブとルー。 そしてビリー・ボーイ・ウォーカー弁護士(ビル・プルマン)とルー。
この3組のやり取りを、もっとじっくり見てみたいと思った。
平和な土地なんだろうな、今よりも平和な時代だったんだろうな、と感じさせるボブのルーへの信頼。
彼はいい青年だ。 彼がそう言うのだから、そうなんだよ。 彼に任せておけば大丈夫。
そんな手放しの信頼が、恐い。
どこから見ても普通の人、もっと言えば好青年の中に、殺人鬼が潜んでいるという恐さもある。
今の世の中、そのパターンが多くなってるから、ほんと、恐いよね。 聖職と呼ばれる職業に就く人であっても信じられないし、親切で好感度の高い知人だって信じられない事を起こすかも。
子供の頃の経験が、人格形成に影響し、性癖に影響し、ひいては殺人鬼にするかもしれない。
そんな事を示すようなエピソードが、間に挟まれる。
そのような経験をした人が全て殺人を犯すわけじゃないが、影響がゼロとは言えないよね。
ケイシー・アフレック主演だから見たのだが、彼が演じたから殺人を犯してもなおルーの人間性を否定せずに見られたんじゃないかと、非常に好意的に見てしまった。
ファンの欲目かもしれないが、淡々とした抑え目の演技で難しいキャラを魅せてくれるケイシーは、演技派だなって思う。
見ていて、凄く心地いい。
コミカルなキャラを演じてる時も好きなんだけどね。



